東京地方裁判所 昭和56年(ワ)9421号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【主文】
一 被告は、原告に対し、別紙第一目録記載の特許権につき昭和五六年一月一四日付けの専用実施権設定契約を原因とする別紙第二目録記載の専用実施権の設定登録手続をせよ。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
【説明】
当事者の主張は、次のとおり。
「一 請求の原因
1 原告と被告とは、昭和五六年一月一四日、被告の有する別紙第一目録記載の特許権(以下「本件特許権」という。)につき、原告を専用実施権者とする別紙第二目録記載の専用実施権を設定する旨の契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。
2 よつて、原告は、被告に対し、本件契約に基づき、主文第一項記載のとおりの判決を求める。
二 請求の原因に対する答弁
請求の原因1の事実は認める。
三 抗弁
1 本件契約は、原、被告間に昭和四六年三月一三日付けで締結された本件特許権に係る発明につき、原告に製造、使用及び販売の独占的実施権を与える契約(以下、「旧契約」という。)を改めたものであるが、原告は、次のとおり旧契約及び本件契約に違反する行為をなし、被告との信頼関係を破壊した。
(一) 原、被告は、旧契約において、外国に特許出願する場合原、被告の共同出願とする旨を約していたところ、原告は、昭和四七年六月一九日ないし三〇日の間にアメリカ合衆国、英国、ドイツ連邦共和国に対し本件特許権に係る発明につき特許出願するに際し、右約定に反し、原告の単独名義で出願した。
(二) 原、被告は、旧契約及び本件契約において、本件特許権に関係する新規開発品(特許発明を含む。)については必ず相互に公開し常に技術の交流を計り、第三者に対し本件特許権の効力を防衛保護する旨を約していたところ、原告が昭和五四年一一月二一日に出願した「上下回転式攪拌機」との名称の発明は、本件特許権に係る発明に牴触するため被告に事前通知すべきであつたにもかかわらず、原告は昭和五六年五月二〇日まで被告に対し右出願の事実を通知しなかつた。
2 被告は、昭和五六年七月二八日付書面により、原告に対し、右行為を理由として、本件契約を同月三一日をもつて解除する旨の意思表示をした。
四 抗弁に対する認否
1 抗弁1冒頭の事実のうち原告が本件契約に違反した事実及び被告との信頼関係を破壊した事実は否認し、その余の事実は認める。同(一)の事実は認める。同(二)の事実のうち、原告が、被告主張の特許出願をしたこと及びその事実につき昭和五六年五月二〇日まで被告に通知しなかつた事実は認める。
米、英、西独三か国への出願の件については、本件契約締結の際、「将来、外国に対し、本契約に基く特殊型攪拌機の実施権譲渡が発生し、それにより生ずる収益は、下記の経費を差引いた残額を折半する。」旨定め、利益を折半することで、原、被告間に了解が成立している。また、原告が昭和五四年一一月二一日に行なつた特許出願については、旧契約の趣旨からみて、出願前に被告にその旨通知すべきであつたともいえるが、原告は、この点についても昭和五六年五月二〇日、被告に右出願に係る発明の内容が本件特許権に係る発明とは何ら関連のないことを説明し、被告の了解を得ているもので、原告において被告との信頼関係を破壊したことはない。
2 同2の事実は認める。」
【判旨】
一請求の原因1の事実は当事者間に争いがない。
二そこで、抗弁について判断する。
抗弁1(一)の事実は当事者間に争いがないが、<証拠>によれば、右三か国に対する外国出願の件については、本件契約締結の際、原告から被告に謝罪の意が述べられ、右三か国への外国出願から将来生ずる利益は折半することで両者間に了解がつき、この了解に基づいて本件契約が締結されたことが認められ、抗弁1(二)については、被告主張の原告出願に係る発明が本件特許権に係る発明に牴触するとの事実を認めるに足りる証拠はなく、かえつて、<証拠>によれば、原告は、その特許出願に係る発明につき昭和五六年五月二〇日被告に対し、被告の本件特許権に係る発明とは無関係に独自に発明したものである旨を説明し、被告の了解を得ている事実を認めることができ、これらの事実に照らせば、原告の行為により原、被告間の信頼関係が破壊されたものといまだいうことはできない。
他に被告の右主張を基礎づける事実関係を認めるに足りる証拠はない。
したがつて、被告の抗弁は理由がない。
三以上の事実によれば、原告が、被告に対し、本件契約に基づき、専用実施権の設定登録手続を求める本訴請求は理由があるからこれを認容<する。>
(牧野利秋 清水篤 設楽隆一)